「腸内フローラ」
きっかけは、2015年にNHKで放映されたドキュメンタリー。そこで、取り上げられて大ブームとなりました。
そして、今や乳酸菌ブームでもありますよね。
それだけ”腸内環境を整えること”に注目が集まっているということです。
まだ解明されていないことも多いのですが、腸内フローラを改善することで、免疫機能や肥満改善、さらに精神的な安定にも繋がると言われています。
*関連記事:免疫力とは?免疫力低下の原因と免疫力を高める食べ物・方法を紹介!
腸内環境を改善するサプリも多く出回っていますが、毎日の食事で改善することもできるのです。
この記事では、おもに次のことをご紹介します!
- 腸内フローラとは
- 「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」のちがい
- 太りやすいのは腸内フローラとは
- 食物繊維について
- 腸内フローラの改善に大事なこと
目次
腸は第2の脳?
腸には、栄養の消化吸収を行なうだけでなく、免疫機能とも密接な関係を持っています。
さらに、がん、糖尿病、うつ病、認知症、アレルギー、肥満、アンチエイジングなどにも関わりがあることがわかっています。
また、腸内細菌は、幸せ物質と呼ばれている「セロトニン」「ドーパミン」等を作り出し、精神的な安定や気力の充実にも影響を及ぼす重要な働きをしているんです。
腸内フローラとは?
腸内フローラとは、腸内の壁面にびっしり張り付いている細菌のことを総称して呼びます。
またの名を「腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)」とも言います。
”フローラ”というのは、お花畑のこと。
細菌たちが壁面に張り付いているさまが、お花畑のように見えるということなんですね。

私たちの腸に生息している細菌の数は、500種類から1000種類にわたり、個数は100兆個以上と言われています。
さらにその細菌の持っている遺伝子は、人間が持っている遺伝子の100倍なんですって。
人間のカラダに潜んでいるのに、人間が持っている遺伝子の100倍って不思議な感じしませんか?
今や、世界中で国をあげて腸内フローラの研究に取り組んでいて、「新たな臓器」や「カラダの一部」とも言われています。
そこまで言われることには理由があるのです。
まだ、解明されていないことも多いですが、それほど可能性を秘めているということなんですよね!
「腸内フローラを改善する」っていうと、今までは、どうしても「便秘改善」に着目されがちでしたが、次のようなことにも効果的であると言われています。
- 太りにくいカラダにする
- 糖尿病を改善する
- ガンになるリスクを下げる
- 認知症になるリスクを下げる
- 肌の若返り効果がある
腸の健康を保つということこそ、ダイエットにも健康維持にも、優先して行うべきことだと考えます。
腸の健康を保つ、すなわち「腸内フローラを改善する」ことです。
*関連記事:脱・便秘薬!漢方や食べ物で改善する方法・すぐに解消する方法は?
腸内細菌「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」とは?
善玉菌や悪玉菌は、よく耳にする名前だと思います。
それと、日和見菌(ひよりみきん)という菌もいるってご存知ですか?
- 善 玉 菌:腸内の清掃をして、悪玉菌の増殖を抑える働きもします。
ビフィズス菌、乳酸菌など
- 悪 玉 菌:ガスや大腸がんの元となる腐敗物質を生成します。
ウェルシュ菌、ブドウ球菌、ベーヨネラなど
- 日和見菌:私たちのカラダの状態によって、プラスにもマイナスにも作用します。
大腸菌、バクテロイデスなど
実は、悪玉菌、善玉菌とは言われてもいますが、きっちりこれらに分けるのは難しいと言われています。
その理由は、先にお話したとおり、腸内細菌の数は、500種類から1000種類に渡るからです。
そこで、鍵となるのが、腸内フローラは「多様性」が必要だということ。
NHKスペシャル取材班により出版された「腸内フローラ 10の真実」でも、「多様性」を強調しています。
「やせる! 若返る! 病気を防ぐ! 腸内フローラ10の真実」著者:NHKスペシャル取材班 ©︎NHK 2015
人種はもちろんのこと、たとえ同じ日本人であったとしても、個人個人で腸内フローラの構成は異なります。
腸内細菌にも生態系があり、サバンナの動物達のように、持ちつ持たれつ生きていて、繁栄のためには多様性が必要になるのです。
腸内細菌の種類が豊富なほど健康だと考えられています。

そこで、気をつけないといけないのは、悪玉菌を優位にしないこと。
悪玉菌が優位になるとどうなるのかというと、お腹にガスが溜まりやすくなり、病気にかかるリスクが高まります。
年を取るごとに、どうしても悪玉菌は優位になりがちです。
また、「ストレス」「偏った食生活」「運動不足」も要因になります。
*関連記事:
アンチエイジングに!「活性酸素」を抑える抗酸化作用のある食べ物をご紹介
女性ホルモンと関係?呼吸・アロマ・漢方・食事で自律神経を整える方法
太りやすいのは腸内フローラが原因だった
”運動しているのに、誰よりも食事に気をつけているのに痩せないのはなぜ?!”
って思ったことはありませんか?

私はあります。(今も思うことが多々・・・)
これって、腸内フローラのせいだったんだなぁって気づきました。
先ほどもお話ししたように、腸内フローラは、国や人種によって、さらに個人レベルで異なります。
その中で「痩せやすい腸内フローラ」というのがあるのです。
もちろん、その逆として「痩せにくい腸内フローラ」というのもあります。
ここで着目したいのは、「腸内細菌により作り出される”ある物質”」です。
肥満と免疫をコントロールする「短鎖脂肪酸」
腸内細菌が作り出す物質のなかに「短鎖脂肪酸」という、肥満をコントロールする物質があります。
短鎖脂肪酸 は、食物繊維や炭水化物、特にポリフェノールを消化するときに、腸内細菌の働きによって産生されるものです。
食物繊維などの食品を摂ることで、腸内細菌がそれらを分解し発酵することにより産生されます。
短鎖脂肪酸は、カラダに脂肪が過剰に蓄積されるのを防ぐ働きをもっています。

肥満体質は、短鎖脂肪酸を作る能力が、極端に下がってしまっているのです。その結果、脂肪を溜め込んでしまうというメカニズムに陥ってしまっていると考えられます。
また、短鎖脂肪酸は、「酢酸」「プロピオン酸」「酪酸」という3つの成分で構成されているのですが、その中で「酪酸」というのは、白血球のひとつである「Tレグ」を増やします。
Tレグを増やすことで、アレルギーや免疫疾患を抑えることができます。
こういうことからも、腸内環境を整えることで、免疫力がアップし、アレルギー疾患が改善されることにも納得できます。

痩せやすい腸内フローラを作るには?
痩せやすい腸内フローラを作るためには、「短鎖脂肪酸を作ってくれる腸内細菌」を増やすことがカギとなります!

短鎖脂肪酸を作ってくれる腸内細菌の好物は、「食物繊維」です。
食物繊維は、私たちの体内の消化酵素では消化吸収されないため、腸内細菌にとって、もってこいのエサなんです。
ここで食物繊維に関わる、「2つのキーワード」をご紹介します。
似た名前ですが、違いは以下のように明確です。
- プレバイオディクス 善玉菌のエサとなるもの。オリゴ糖やイヌリンなど
- プロバイオティクス 生きた善玉菌の入った食品や医薬品など。ヨーグルトなど
食物繊維と密接な関係を持つのは、「プレバイオティクス」です。
多くのプレバイオティクスの食品は、「レジスタントスターチ」と呼ばれます。
耳慣れない言葉ですよね?
日本語にすると「難消化性でんぷん」となります。
ちなみに、レジスタントスターチの対角にあるのが、パスタやお米で、これらは摂取すると血糖値が上昇します。
その一方で、レジスタントスターチは、血糖値が上昇するのを抑える働きがあります。
また、小腸で消化されにくく、大腸まで到達できるから、善玉菌の格好のエサになり、短鎖脂肪酸を産生できるのです。
レジスタントスターチは、バナナや芋類、穀物やマメ類に多く含まれます。
食物繊維については、次の項目で詳しくご紹介させてくださいね!
2つの食物繊維「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」について
食物繊維というと、どうしても繊維たっぷりの食べものと考えがちだと思うのですが、そういうわけでもないんです。
食物繊維は、次の2つに分かれ、働きもそれぞれ違います。
水溶性食物繊維
水に溶けやすい性質を持ち、発酵しやすく、腸内細菌によって短鎖脂肪酸やガスを産生される。コレステロールを下げ、心疾患のリスクを抑える。
水溶性食物繊維は、次の食品に多く含まれます。
- ゴボウ
- アボカド
- アスパラガス
- 玉ねぎ
- らっきょう
- にんにく
- きのこ類
- 海藻類(わかめ、昆布、ひじきなど)
- アマニ

不溶性食物繊維
水に溶けない性質を持ち、便のかさを増やして便通をスムーズにし、有害物質を外に排出する。
(不溶性食物繊維の中でも一部は、腸内細菌により短鎖脂肪酸となると言われています。)
不溶性食物繊維は、次の食品に多く含まれます。
- 小麦ふすま
- マメ類
- 全粒粉
- アマニ
- オクラ
- カブ
水溶性食物繊維:不溶性食物繊維の7:3くらいが理想的と言われているのですが、厳密にするのは難しいですよね。
「野菜や果物と穀類をしっかり摂って食物繊維を摂取する」という意識が大事です。

腸内フローラの改善に大事なこと
これまでに、腸内フローラに大事なのは「多様性」とお話しました。
腸内環境にも生態系があって、腸内細菌たちは相互に助け合って生きているのです。
細菌の種類が豊富で、多様性が保たれていないと、健康とは言えないのです。
今、便秘やアレルギー、痩せにくい体質で悩んでいたとしても、腸内フローラは変えていけます。
そのためには、食事がとても大事なのです。
いかに、”腸内細菌が喜ぶ食事を摂るのか”ということが大事です。
お野菜や果物を中心に、いろんな種類の食品を摂りましょう。
いろんな種類の細菌がいるということは、それぞれ好みも違うのです。
だから、何かを制限したり、「○○だけ食べる」というダイエットは腸内フローラの多様性を減らしてしまいます。結果、そのことが病気を呼んでしまいます。
*ただし、ファスティングに関しては、イギリスの作家 TIM SPECTORの「THE DIET MYTH」では、「短期間のファスティングは”Friendly microbe”(良い影響を与える細菌)を活性化させる」という記述があります。
「THE DIET MYTH」著者:TIM SPECTOR ©︎Tim Spector 2015
*関連記事:半日から出来るファスティング!酵素ドリンク以外の方法・効果・回復食をご紹介!
あとは、悪玉菌が好むことを排除するのも忘れずに・・・
悪玉菌は、お肉を好みます。
野菜よりお肉中心の食事をしている人は要注意です。
また、ストレスも悪玉菌が増える原因となってしまいます。
腸内フローラの改善には、ストレス軽減は不可欠です。ストレスによる自律神経の乱れによって便秘は起きます。
本来、排出されるべき悪玉菌や悪玉菌による有害物質が、腸内に止まることによって、腸内環境は悪化の一途を辿ってしまうのです。
これって、東洋医学で言うところの「気滞」の状態です。あなたなりのストレス解消の方法を見つけることがとても大事ですよね。そして、睡眠をたっぷり取ることもとっても大事です。
*関連記事:東洋医学の体質診断で体質改善!有効な漢方薬・お茶・ツボ・食べ物・レシピをご紹介
ヨーグルトで腸内フローラは改善できる?
「腸に生きたまま届く」と言われているヨーグルト。
Photo by Alison Marras on Unsplash
先にご紹介した「腸内フローラ 10の真実」によると、腸に届いた乳酸菌は、ほとんどの場合、体内に住み着くことはないんだそうです。
ただ、ヨーグルトの乳酸菌が腸内フローラの細菌たちと相互に作用して、バランスを整えてくれるという効果は期待できます。
そのため効果を実感するには、継続して摂取してということが大事になってきます。
まとめ
まだまだ解明されていない腸内フローラではありますが、健康、美容、ダイエット、アンチエイジングにも効果があると期待されています。
そのために忘れていけないのは、腸内フローラは「多様性」が大事ということ。
腸内フローラの多様性を保つために豊富な種類の食材を摂ることを意識しましょう。
食事によって、あなたの腸内フローラは確実に改善できるはずです。
あなたの腸内にいる、たくさんの腸内細菌が喜んで仕事をしてくれるよう、彼らの好物を与えてあげましょう!
こちらの記事で免疫力と腸内環境の関連についても触れていますが、さらに理解が深まりました。
免疫力とは?免疫力低下の原因と免疫力を高める食べ物・方法を紹介!